2015年12月アーカイブ
これはロフトワークでのブログに掲載した記事です。
この度そのブログサービスが廃止されることとなり、こちらへコピーしておきました。
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無名、駆け出しイラストレーターの私なのに、と言うか逆にだからこそなのか、2008年から作者詐称、無断改変、無断使用の被害を受けていました。
発見したのは私自身でたまたま「黒猫」「イラスト」などのワードで画像検索をかけていて、どう見ても見覚えがあるというか、自分の作品に雰囲気のよく似た猫のイラストを見つけたのです。上が私の描いた原画です。このイラストの首から上をそのまま切り取ってコピペして、他人の稚拙な絵とドッキングされてキャラクターを作られていました。
相手方は故意に著作権を無視する常習悪徳業者などではなく、行政と共催で観光での町興しイベントを主催するなど地域のために熱心に活動する市民団体でした。(とは言え実質的には観光業組合が主体で営利の側面が強い)
従って作者から著作権を放棄しているものではないとの指摘を受ければ直ちに謝罪、削除を行ってもらえるだろうと考えたのですが、何と信じられない程の悪質な対応を受け、最終的に民事訴訟で決着をつけるしかないところまで行きました。
事件の発覚は2013年7月、提訴は2014年6月、判決が出たのは2015年9月でした。当然私が勝訴し、この種の裁判の中では予想を大幅に上回る賠償金が認められました。
しかし私の被った金銭的損害はその数倍に上ります。心労に至っては量り知れません。依頼された作品の制作に取りかかれる心境ではなく諦めるしかないこともありました。
同様な被害を被った方のブログに「結果から言えば、お金を払って作品を使って貰ったようなもの」という言葉がありましたが、私のケースも全くその通りです。
それでは裁判で争ったのは間違いだったのか、泣き寝入りするか、妥協して示談で解決すべきだったのか、と問われると、それは違います。
イラストレーターとして、クリエイターとしての誇りを持って、これからの創作人生を悔いなく突き進むために、この裁判は決して間違いではないどころか、確固たる信念を植え付けてもらえました。
現在判決文はデータベース中に公開され、半永久的に著作権裁判史上に刻まれることでしょう。私のイラストもそれに負けずに末永く愛されて行くように、頑張らねば、と思います。
判決文へのリンクは下記の私のブログ記事の中にありますので、関心のある方はどうぞお読み下さい。
http://www.mojunicat.com/mojuni-blog/2015/10/post-2344.html
実は公開されてていない双方の陳述書の中にこそ皆さんに知って頂きたい数々の重大な真実があるのですが、それをここに公開することは諸般の事情で憚られます。実際に裁判所に出向き、資料閲覧を申し出るしか目にする方法はありません。
「花盗人に罪はない」とかいうような言葉もあるように、被告は私のイラストを好きになってくれた人でもあり、もっと言うと私のイラストが可愛かったために起こった不幸であり、この点は私としても胸が痛むものです。しかし、だったらもっとヘタな可愛くないイラストを描いとけばよかったのかというとそれは違います。
折しも結審直後、世間では降ってわいたかのようにかのエンブレム事件が勃発し、連日連夜「著作権」とか「侵害」とか「ネットからパクリ」という言葉が飛び交いましたが、これは私にとっては天の助け、神風とも言えるものでした。
著作権を侵害された被害者として、侵害者側の人々へ教えておいてあげたいこと、もしかしたら今後同様の被害を受けるかも知れないクリエイター仲間の皆様に聞いておいて頂きたいことがあります。
上に述べたように、イラストに限らずあらゆる創作物のクリエイターなら自分の作品を気に入って選んでくれたことに対しては、誰も腹を立てる人などいない、ということを知って欲しい。この世知辛い世の中で出し惜しみされることの無い唯一のもの、それは芸術家の才能ですよ。(あ、愛とも通じてるもの) お金と違って作品は無尽蔵に生み出すことが出来るのですから、欲しいという人にどんどんあげていっても決して困ることなどないものなのですよ。他人の作品を盗作することによってしか作品を作れない人とは違うんです。
しかし自分の作品が他人によって無断で改変され、或いは他人が作者を詐称するというのは絶対に看過できるものではありません。
侵害の事実の指摘を受けたら、とにかくすぐに素直に認めて謝罪し使用中止にすることが第一、間違っても指摘を無視してそのまま使用や掲載を続けたり、ましてや相手をののしったりしたら、その瞬間から事態の様相は悪質侵害事件となります。
裁判を闘う過程では、色々と腹立たしいことに耐えなければなりませんでした。私が家族の入院介護をしながら夜中にイラストを描いていたことについて、「原告にとってイラストは趣味の範疇であり損害賠償に値しない」などと言われました。どんなに第一線で活躍している人でも介護離職せざるを得ないケースがあるのが今の日本の抱える全国民的な問題なのに、いくら裁判を有利に進めたいからとは言え、このような発言は人間としてどうなのでしょうか。まあ裁判というのはこのようなものだとは弁護士の先生から事前によく説明して頂いていたし、幸いメンタルには自信があるので落ち込んだりすることはありませんでしたが、私はタダでイラストを提供し、キャラクターとして客寄せ効果をもたらした、ある意味恩人なのに、どうして非難攻撃されなければならないのか、今以て理解不能です。イラストとイラストレーターがここまで軽く扱われる社会であるとは知りませんでした。
「ネット上にアップしたイラストに著作権を主張することは文化の発展を阻碍する」という暴言に至っては、エンブレムの人と連携して大いに闘って欲しい次元です。
訴訟という手段を選ばざるを得ない状況に陥った被害者側のクリエイターの皆さんへの助言、それは自分と自分の作品に誇りを持っているなら、その分野の一流の弁護士の先生に依頼すること、です。あなたの側に正義と信念があれば、費用について相談にのり助けて下さる弁護士さんはおられます。
以上を以て今回の事件の総括と致します。